2023.01.04 14:09あんこか、カスタードか。BRUTUSのムック『あんこか、カスタードか。』以前、カスタード特集で取材執筆した「もりかげ商店」が函館に移住されたので、あらたに「今」の森影里美さんを取材しました。素材の生まれる場所に近くなるほど、おいしくするという作為が不要になるのでしょうか。東京に住んでいた頃の味とは違う、「函館版カスタードチーズプリン」ができそうです。
2022.12.26 06:26新・あまから手帖 路地裏のジェノヴァ1984年に創刊した、関西の老舗料理誌『あまから手帖』がリニューアル。この2023年1月号から、編集長は元『dancyu』編集長の江部拓弥さん、デザインは白い立体のチームになりました。思わず声が出るほどカッコいい、美しい表紙。〆切山脈を登頂中だというのに、手に取らずにはいられないし、取ったらページをめくらずにいられない、めくったら次のページもめくらずにいられない。雑誌っておもしろい!っていう気持ちの塊が、「うぉー!」という鳴き声みたいになって心の底から湧き上がりました。「1」のシンプルな数字は1月号、でも江部号の第1号でもあるような。「1」に参加できて光栄です。私はイタリア料理店「ラ・ランテルナ・ディ・ジェノバ」、路地裏のジェノヴァを書いています。
2022.09.07 13:33いいお店のつくり方 保存版 インセクツいいお店のつくり方。タイトルも中身も外連味のない、いい本だなぁ。いつもおもしろいこと考える出版社、インセクツが「いい」とピンときたあらゆるジャンルのお店を2016年/2017年に取材した記事。に加えて、同じ店を2022年にも取材した定点観測。その間にはコロナ禍もあって、店を「つくる」だけでなく「つづける」ことについて考える本になっていました。吉本ばななさんとともに、すごくすごく光栄だけど、なぜ私?と編集長に訊かずにはいられなかったけど、いいお店についてのエッセイを寄稿しています。タイトルは「迎える、迎えられる」。(謹呈がやけにうれしい)
2022.05.21 04:31RED U-35 応援メッセージ「これからの料理人」RED U-35(RYORININ's EMERGING DREAM U-35)とは、35歳以下の料理人によるコンペティションです。今回から審査員長に狐野扶実子氏が就任し、新たな審査員団となったそうです。時代のスピーディな変化とともに、料理人の定義、在り方、自身の生き方もどんどん変わっています。その中で、この大会が待っている人物は「時代を切り開く食のクリエイター」。このスピリットを応援する一人として、メッセージを書きました。飲食業界では人材不足が深刻化していますが、飲食業は、人を喜ばせることができる仕事。食とは、人が人らしく生きるうえでの幸せの一つです。そういう誇りを持って働く大人たちがいる、という心強さを持って飲食の大海に飛び込んで欲しい。で、今の時...
2022.05.14 03:13一度は食べに行きたい名店の味『おとなの週末』のお仕事は、もしかしたら初めてかもしれません。一冊「街イタリアン」特集ですが、尊敬する編集者からのお声がけで、イタリアンの「一度は食べに行きたい名店の味」の3店を書いています。「ヴォーロ・コズィ」「オストゥ」「ロッツォシチリア」。すべて『シェフたちのコロナ禍 道なき道をゆく三十四人の記録』(文藝春秋)にもご登場いただいたお店ですが、選んだのは私ではなく、じつは編集者です。お店が決まって、私に依頼が来た、という順番。このお店ならイカワさん、と考えてくれたということで、書き手としては冥利に尽きます。●●産の食材とか有名店で修業したシェフといったスペックではなく、修業して店を開いて10年以上。長い時間の先に拓ける味、レシピの行間にある深い味、...
2021.11.22 05:35心に響く、大人の読書案内。初『クウネル』です。今回の号は、本と映画があれば人生は楽しい!という特集。私は本のほうを担当。「今こそ読みたい、名作リスト 心に響く、大人の読書案内。」で、NHKの「100分 de 名著」にちなみ、長く読み継がれる名作を2つ紹介しています。志賀直哉と横光利一。真逆のタイプですが、じつはどちらもゼミの研究課題でした。
2021.08.10 07:32喉は渇いている。 エッセイ夏のBRUTUS、ビール特集「ビールについて語らせろ!」では、私も吠えるように語っています。特集最後のエッセイを書きました。タイトルは「喉は渇いている。」これまでさんざん仕事を休み、家族を巻き込み、旅して飲んで。そんなビールの遍歴が役に立つ時がきました(涙)。制作中に緊急事態宣言が発令され、再び酒類提供の禁止も要請となり、提出済みだったエッセイ原稿は最後を書き直しています。祈りを込めた最終行です。
2021.06.12 01:57『シェフたちのコロナ禍』文春オンライン特別寄稿 前編・後編6月を過ぎてから、禁止されているお酒の提供を「始めます」と表明するお店が堰を切ったように増えました。要請を「守る」「守らない」「守れない」。目の前の事実がすべてなのでなく、それぞれの選択には背景があり、その答に至る道程があります。彼ら飲食店の店主たちが、この1年をどう戦ってきたのか。そこに目を向けてほしいという願いを込めて。
2021.03.20 01:05ペレグリーノ/ピガール トウキョウシンプルパスタ号、今回はその特集記事でも、「ペレグリーノ」を書いています。シンプル=簡単、簡略ってことではありません。髙橋隼人シェフのパスタを知れば、その意味がわかります。レシピを見れば、材料も手順も「これだけ?」って突っ込みたくなるくらいの少なさ。トマトソースのパスタソースなんか、瓶詰めのパッサータ(裏ごしトマト)を温めるだけです。でも、そのパッサータに何を選び、どう温めるか。パスタをどう選び、どうゆでるか。お湯の温度、塩分濃度、ゆで時間。仕上げのオリーブオイルまで、思考し続ける。彼にとってのシンプルは、磨き上げたところにある精度。家庭用にアレンジしてくれたパスタでさえも、その哲学が伝わります。もう一つ、連載の「東京で十年。」は、ヨーロピアンパブ「ピ...
2021.01.17 06:35もりかげ商店のチーズプリン卵と牛乳がクリームになってしまうカスタードは、どこか童話的な食べものです。単純。だからこそ永遠に記憶の片隅にいて、不意に現れては大の大人を一瞬に子どもへ戻してしまう、魔法のような。BRUTUSの「なにしろカスタード好きなもので。」で、もりかげ商店のチーズプリンを書いています。目黒の古い長屋でときどき店を開けるもりかげ商店と、ゆっくりと静かな喋り方の(印象に反してひょろりと背の高い)森影里美さんは、私に言わせればそれ自体がファンタジー。いつもかりんとうやレーズンサンドなどが並ぶこの焼き菓子屋に、新しく登場したチーズプリンは、彼女が子どもの頃に大好きだった商店街のケーキ屋の味。その物語も、北海道・室蘭という言葉の響きさえもきゅんきゅんしてしまいますが、何よ...