太田和彦さんの新刊に解説を書きました。


はじめて、ひとさまのご著書に「解説」というものを書かせていただいた。

太田和彦さんの新刊『おいしい旅/錦市場の木の葉丼とは何か』(集英社文庫)

ふるえた。


 今や居酒屋先生の太田さんは、20代の私にとって、広告デザインの人で資生堂の人で、銀座の人。広告が最高にやんちゃな(と私には思えた)時代、まだ誰にも見えていない世界を、ほら、次はここだよとみんなに見せてくれていた。


 太田さんの『精選 東京の居酒屋』(草思社)を神保町の書店で見つけたのは26歳のとき。

あのキラキラした銀座の人が、橋を渡って、月島の古いコの字カウンターに座り、煮込みに美しさを感じていたという驚き。

 この本を手に、東京に来て初めて道玄坂の色っぽい路地裏にも足を踏み入れたし、新宿三丁目の地下にも行った。 その方の本に参加させてもらえる日が来るなんて。

神保町でただ能天気にわくわくしながら本をレジに持って行った自分に、こんな未来が待っていたとは。 
なんて、しみじみしながら書きました。