ひとり暮らし／秋田魁新報

ひとり暮らし｜井川直子　naoko ikawa

この春から、ひとり暮らしを始める人も多いと思う。 ということは、何を、いつ、どう食べて生きていこうが自由だ。 緑の野菜を食べなさい、と言われることもない。鶏のから揚げは５個までと制限されることもない。深夜に牛丼をかきこんだっていい。 上京したての頃、そう気づいた私はブーランジェリーのバゲットを食べ続けた。 アパートのある駅から、わざわざ電車に乗って２つめの大きな街にほぼ毎日通い、フランス語の名を掲げた店で午後の焼きたてを買う。急いで持ち帰ると、六畳もないほど小さな部屋には、たちまち小麦の香りが満ちる。 私は着替えもせずに冷蔵庫からバターを取り出し、冷えたそれを分厚く切って、まだほんの

note（ノート）

故郷、秋田の新聞でリレー連載しているエッセイ「遠い風 近い風」。

4月なので、新生活を始める人達に向けて書きました。

懐かしいなぁ。

エッセイには書けなかったけど、「自分を守るのは自分」と気づいてから、嫌いだった牛乳もがんばって飲んだなぁ。生き延びなくちゃ、と思って。


井川直子　naoko ikawa

文筆