2024.12.09 07:16ル・ブルギニオン/東京で二十五年。final episode月刊としては最後のdancyu、目次にも「最終回」の文字が並んでいます。連載「東京で十年。」もfinal episode。スペシャル版「東京で二十五年。」となって、「ル・ブルギニオン」のお話を3ページに拡大してお届けしています。菊地美升シェフから「東京で十年。の連載、僕、出たいなぁ」と聞いた時、すでに「ル・ブルギニオン」は20周年目前でした。通常の連載は10年のお店のお話なので、いつかスペシャル版のタイミングで、と思っていたんです。それが最終回になるとは想定外でしたが、でも果たせてよかった!そして「ル・ブルギニオン」菊地シェフの言葉は、レストランを愛する人、レストランの仕事を志す人、生きている限り食に関わっていく私たちにも響く、メッセージになりました。...
2024.11.10 02:08メルシーベイク/東京で十年。「ほとんどの人間は、じつのところ自由を欲しがっていない。なぜなら自由には責任が伴うからである。ほとんどの人間は、責任を負うことを恐れている」そう言ったのはフロイトだそうですが、じゃあこの自由とは、責任とは、いったい何を意味するのでしょう。自由と責任ってあまりにも聞き慣れたペアリングで、うっかりするとありきたりに「そうだよね」なんてわかったふりをしてしまいそうになるけれど、今回の「東京で十年。」は、そこを曖昧にしない人のお話です。「メルシーベイク」の店主で菓子職人、田代翔太さん。彼は、自分が求める「自由」の中身が何かがわかっていて、「責任」のヒリヒリするような手触りも感じている。それでいて「恐れない」。気骨ある職人とお店の十年です。
2024.10.10 03:47オルランド/dancyu「東京で十年。」という連載をつづけて幸福に思うのは、「このお店の10年後を見てみたい」そして「書いてみたい」と願って、本当に書けることです。神泉の「オルランド」もそうでした。代官山「ラ・フォルナーチェ」から始まって昇り龍だった小串貴昌さんが、満を持した店も自信も失い、「だけどこのままじゃ終われない」と背水の陣でオープンしたエノテカ。私は10年前、たったひとりDIYで改装する彼を、通りからちらっと眺めたことがあります。黙々と大工仕事に励む光景は、再生への儀式のようでもありました。その時、まだ開店もしていないのに「10年後を書きたい」って思ったんです。現在発売中の『dancyu』11月号で、その願いが叶っています。すでに公表されている通り、『dancyu』...
2024.09.06 05:13LAMMAS(ランマス)/dancyudancyu連載「東京で十年。」、今月は三軒茶屋のチーズ専門店「LAMMAS(ランマス)」です。ヨーロッパにはチーズを「製造する」つくり手のほかに「熟成させる」プロがいます。「熟成師」の仕事で、チーズの質はより高められ、味わいの幅もぐんと広がる。イタリアでその味に出会い、チーズ熟成工房で働き、料理からチーズに転向した富山和亮さんが東京で開いた「LAMMAS」。10年前は、たった6坪の小さなお店だったんです。それが今や本店のほか、六本木と虎ノ門の2つのヒルズにお店を構えています。彼がやりたかったのは、熟成師チーズのおいしさを正しく伝えること。そのために品質を保持して、お客さんを絶対にがっかりさせないこと。耐える時が続いた数年間、彼はなんと昼間に別の仕事を...
2024.08.09 11:38鮨竹/dancyu江戸前鮨、「鶴八」一門、銀座、そして女性。いくつもの難関をくぐり抜けてきた、鮨職人です。鮨職人の世界に飛び込んだ時は、「知らな過ぎて怖さもなかった」という言葉が印象的でした。知らないって案外、大事かもしれませんね。ここまで書いていいのかな、でも大事なことだな、と恐る恐る書いたことも、全部オッケー。本当に任侠映画のような、さばさばっとした鮨職人でした。でも,私は開店当時のジーン・セバーグみたいなキュートさも、目に焼き付いて忘れられないのです。
2024.07.09 10:10COFFEE COUNTER NISHIYA/dancyudancyuの連載「東京で十年。」は、浅草の「COFFEE COUNTER NISHIYA」です。西谷さんがふと、「まだSNSがなかった頃の時間」というフレーズをつぶやいて、原稿を書く間ずっとその情景を思い出していました。まだSNSがなかった頃、私たちは飲食店でどう過ごしていたか。まだSNSがなかった頃、私たちは何が楽しかったのか。まだSNSがなかった頃、私たちには、足りないものがあったんだろうか。今、「COFFEE COUNTER NISHIYA」にあるのは、SNSがなかった頃の静けさと、目の前の人とちゃんと目線が合う会話と、人が人を思ってつくってくれる一杯です。タイトルは「あなたのために」。西谷さんの姿勢を表す言葉ですが、じつは飲み手にとっての言葉...
2024.06.06 05:55dancyu7月号、連載と特集と鼎談とdancyu7月号、テーマは「ひとりでも居心地のいいおいしい店ガイド」です。ひとりで外食するのはちょっとドキドキだけど、楽しんでみたい気持ちもある人に向けての特集。と聞いて、そうか、ひとりで外食するってあんまり普通じゃないのか、としみじみした私のところに鼎談のご依頼がありました。ひとりで食べる人代表みたいで照れますが、『東京最高のレストラン』(ぴあ)の編集長・大木淳夫さん、「エリックサウス」総料理長の稲田俊輔さんとおしゃべりしてきました。ひとり食べの世界って千差万別。「仕方ないひとり」じゃなくて、積極的かつ本能的にひとりを満喫するお二人の「ひとり論」は痛快。さわやかでさえあります。そして「実は、ひとりで行ける名店」でも、心のふるさと「ロッツォシチリア」...
2024.05.13 14:00デイ・ドリーム・ビリーバー/秋田魁新報社母についてのエッセイを書きました。忌野清志郎さんの曲、「デイ・ドリーム・ビリーバー」に秘められた母への思いと、私自身の母への感情が重なった瞬間のお話です。秋田魁新報 リレー連載「遠い風 近い風」 2024.4.27
2024.05.06 00:47アミニマ/東京で十年。dancyuの連載「東京で十年。」は、2014年6月、神宮前にオープンしたビストロ「アミニマ」です。当時、ワイングラスのステム(脚)を取ったタンブラータイプのグラスが広まり、ワインを「コップ酒」的に楽しみたい流れがありました。そんな時代の気分を表現したビストロ。オーナーソムリエの鳥山由紀夫さんは、幼い頃から筋金入りの外食好き、レストラン好き。阪神淡路、東日本、熊本といった震災やコロナ禍のたびに、自分たち飲食店の存在意義を考え直し、悩みながら歩んだ十年でした。
2024.04.08 03:32イタリアワインと食材 阿部/東京で十年。連載「東京で十年。」111回、ゾロ目ですね。井の頭公園で「今日も人知れず営業中」を続けて十年。「イタリアワインと食材 阿部」は、『ジョジョの奇妙な冒険』と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と「コップのフチ子©」、アルベルト・マンフレッディが共存するイタリアワインバーです。漫画やアニメなどのポップカルチャーを敬愛する阿部さんのキャラクター全開。そのオタク気質によって、イタリアワインへの探究心もまた花開くこととなります。個性的すぎて理解不能、だけどなんだかおもしろくって、ワインがすごい。個人店だもん、こういうお店があってもいいよね。いや、あったほうがいいよね。ってことを、十年かけて阿部さんは証明しました。
2024.03.12 01:49フード&カンパニー/東京で十年。dancyuの連載「東京で十年。」、今月号は学芸大学のスーパーマーケット「フード&カンパニー」です。グローサリーストアと書いたほうがいい?と迷いましたが、オーナーである白さん、谷田部さんの言葉「人が生きるために必要な食」「日常」「些細な心の充足感」を辿っていくと、やっぱりスーパーマーケットになりました。「毎日のお買い物」という小さな場所から、彼らはいつも「社会」という大きな集合体を見ています。経済の仕組み、生産物の背景、環境、教育、ものづくりの継承。理想を語るのでなく、具体的なアイデアを実現していこうとするお二人のお話に、私も改めて「今を生きる者は全員、未来をつくる当事者である」と気が引き締まりました。それにしても、小売・流通・接客経験ゼロからスタート...
2024.02.12 10:46ラ・トリプレッタ/dancyu「東京で十年。」取材前から、この連載史上最高の情報量だったんです。FB、インスタグラムは1日に何度もアップ、インスタライブやYou Tubeなどの動画もアップされていて、それを追うのに丸3日。取材のときも、次から次へとピッツァ、スタッフ、サッカー、格闘技、地域、働き方、育て方、誰かや何かのためになることがとめどなく溢れ出てくる。dancyuの連載「東京で十年。」、ピッツェリア「ラ・トリプレッタ」@武蔵小山のことです。私の裏テーマは「純粋な衝動」でした。花火のように3Dに飛び散っていくオーナー・ピッツァ職人、太田賢二さんの核は、17歳で感じたイタリアのバールの風景です。サッカーの試合に、店員もお客もいんなが「うぉー!」ってなっている熱狂と歓喜。いつまでも、いつまでもそれ...