ごはんから生まれた洋食物語

2021年11月月号のdancyuでは連載・東京で十年。のほか、ごはん特集内の「ごはんから生まれた洋食物語」も書いています。

まずは洋食ごはんから。

この原稿を書きながら、私は昔取材した菓子職人のことを思い出していました。

イタリアで修業中だった彼に夢を訊ねると、こんなことを言ったんです。

「今までにない何かを、お菓子で発明しなきゃダメですね。誰もが〝そんなやり方もあったのか〟とか思うような」

新メニューやアレンジの域ではなく、発明。それは100年先のスタンダードを創るような仕事のこと。

そして、洋食は発明だと思うんです。西洋に憧れて、真似して磨いていた日本人が、「ごはん」に向かって歩き始めた時からまったく違う料理が生まれた。

洋食は、今や世界に誇れる日本オリジナルです。

「一本、筋が通っている」ってよく言いますが、「自分」というアイデンティティは個人のレベルでも、国のレベルでもいちばん大事なように思います。

平たく言うと、「俺はコレ」って超大事!


井川直子 naoko ikawa

文筆