2022.05.15 11:08アクオリーナdancyu連載「東京で十年。」です。念願かなって、祐天寺のジェラテリア「アクオリーナ」を書ける日がやってまいりました。店主の茂垣稜介さんは、今ジェラート職人でありますが、料理、生ハム、チーズ、お菓子などいろんな道を歩いてきた人です。あっちこっちの角度からものを見る視点と、言葉のように数字を操れる知識と、それぞれの道で育まれた感性。それらをもってつくられるジェラートは、料理のような、アートのような、だけどジェラート。私が中学生の時、ある友達が「科学はロマンティックなんだよ」と教えてくれました。その言葉を思い出した「アクオリーナ」の十年。タイトルは「サイエンスと、ロマンスと」。
2022.04.19 05:36按田餃子dancyuの連載「東京で十年。」は、代々木上原「按田餃子」の十年。店主は料理家の按田優子さんと写真家の鈴木陽介さん、別にれっきとした本業を持つ二人です。取材は鈴木さんだけリモート参加でした。キラキラでふかふかのお座布団に鎮座するノートパソコン、画面にニコニコと現れた鈴木さんはまるでご本尊のようでありがたさ満開。おなか痛くなるほど笑いっぱなしの取材でしたけど、お二人はすべてがひたむきで、でもやっぱりなんかどこか可笑しみがあって。あの惚れ惚れするコピー『助けたい包みたい按田餃子でございます』の誕生秘話もそうでした。一つは本誌で読んでいただくとして、じつは原稿に書ききれなかったもう一つの秘話は、スーパーマーケットの歌。鈴木さんは下積み時代、買い物に行く度に...
2022.02.19 02:53L'AS(ラス)dancyu3月号。連載の、東京で十年。のほうは、フランス料理店「L'AS(ラス)」です。取材時間に少し早く着いて、オンタイムになるまで待ってお店を訪ねたら、兼子大輔シェフはすでに着席してニコニコ待ってました。きっと、1分あったらできることたくさんある人なんだろうな。そんな無駄のないシェフを独占しているというのに、お話が面白すぎて過去最高レベルの取材時間になってしまった…ごめんなさい。ですが、兼子さんは全然焦らないしキリキリしない。頭の中で常に、カチッカチッと段取り変更ができていたのかも?と想像して、雪の帰り道、再び「すごいなぁ」が湧き上がってきました。(聞き過ぎ気をつけます)兼子シェフには8年前、移転したばかりの「ラス」を「料理通信」で取材しています...
2022.02.19 02:47dancyu 日本酒特集2022「天美」日本酒の造り手と売り手と飲み手の情熱、そしてdancyuの日本酒愛がほとばしる2022年3月号(2月発売)の日本酒特集。私は過去に、「新政」「剣菱」「獺祭」などを書いてきましたが、久しぶりの今回は山口県のニューカマー「天美」です。文章の冒頭で書いた、山口のお酒は「みんなちがって、みんないい」と教えてくれた山口県下関市の居酒屋では、縄のれんの前に「天美」の瓶が並んでいました。多くの人に、誕生を祝福されたお酒なのですね。生まれてきたことをこれだけ喜んでもらえるって、すごいこと。生まれておめでとう!と、生まれてくれてありがとう!を書いたつもりです。それにしても、〝dancyuの日本酒特集〟は、日本酒に携わる人たちにとって特別中の特別な1冊なのですね。と、毎年...
2022.01.08 07:47高太郎2022年2月号の「東京で十年。」は、渋谷の居酒屋「高太郎」。スペシャルエディションの3ページです。dancyuでの登場回数が多いと聞いて、編集部に数えてもらったら10年で22回!お店の紹介だけでなく、つまみのレシピやテイスティングなどの企画も含めての数とはいうものの、編集スタッフだって入れ替わるのに、同じ店に何度も依頼することはそうそうないのにこの回数。代々の担当が「やっぱり高太郎さんに」と思うほどの信頼があるのでしょうね。そういう私も、コロナ禍に始めたnoteでの連載「#何が正解なのかわからない」で、高太郎さんの言葉を聞きたい!とお願いしました。(連載は2021年、『シェフたちのコロナ禍 道なき道をゆく三十四人の記録』(文藝春秋)として書籍化)信頼...
2021.12.24 05:09バーカロフェッロヴェネツィアのバーカロが、東京の富士見ヶ丘にあるのです。横顔の美しい女主人のバーカロです。小説家になりたかった彼女は、一つの題材を深めていく作業が好き。そんな自分の、自分らしい生き方として、「バーカロ」を深めていく道を選びました。レースをかけたランプも、赤褐色のタイルの床も、隣で飲む街の人もいい感じ。マンマに教わった料理は本当に毎日食べたいほど優しくて、私はこの一軒があれば安心しておばあさんになれると思いましたよ。dancyuの連載「東京で十年。」は、富士見ヶ丘の「バーカロフェッロ」。
2021.11.09 12:41BAR MAQUÓ バルマコdancyu連載「東京で十年。」は、牛込神楽坂のスペインバル「バルマコ」です。酒類提供がようやく許された10月、お店の再開後すぐに取材をお願いしました。バルはお酒を飲む場だから、お酒が出せないなら店を閉める。店主の今村真さんはそう考えてずっと休業していたので、取材ができるかどうかは、要請がどうなるのか?にかかっていました。再開しても、ブレーキを踏みながらゆっくり、少しずつ。人数を抑え、真面目すぎるくらい真面目に感染対策を徹底する、そういう店主だからお客は安心して通えるんですね。慎重だけど、でも、お客の楽しそうな顔を見ながら料理が作れる。心の中では思い切りジャンプしていたみたいです。タイトルの「もう一度高く、JUMPするよ」は今村さんが中学時代から敬愛す...
2021.10.13 10:14砂の岬dancyu 2021年11月号の連載・東京で十年。は、桜新町の「砂の岬」です。お店の常連さんから「10年です」と情報をもらって、初めて訪れたのが今年の初め。すぐに取材をお願いしようと思ったのですが、その後「砂の岬」はマダムのご出産、緊急事態宣言の延長、テイクアウトから通販への移行などが重なり、しかしギリギリ11周年になる前にお願いすることができました。不器用で、何をするにも時間がかかる。そんな店主夫妻の生き方は、自分に誠実だからこそ。今この時代、逆に眩しく、心強く感じます。
2021.10.13 09:52ごはんから生まれた洋食物語2021年11月月号のdancyuでは連載・東京で十年。のほか、ごはん特集内の「ごはんから生まれた洋食物語」も書いています。まずは洋食ごはんから。この原稿を書きながら、私は昔取材した菓子職人のことを思い出していました。イタリアで修業中だった彼に夢を訊ねると、こんなことを言ったんです。「今までにない何かを、お菓子で発明しなきゃダメですね。誰もが〝そんなやり方もあったのか〟とか思うような」新メニューやアレンジの域ではなく、発明。それは100年先のスタンダードを創るような仕事のこと。そして、洋食は発明だと思うんです。西洋に憧れて、真似して磨いていた日本人が、「ごはん」に向かって歩き始めた時からまったく違う料理が生まれた。洋食は、今や世界に誇れる日本オリジナル...
2021.09.28 03:33ロッツォシチリアdancyu連載「東京で十年。」は、白金高輪のシチリア料理店「ロッツォシチリア」です。『シェフたちのコロナ禍 道なき道をゆく三十四人の記録』(文藝春秋)にも登場してくれたお店です。緊急事態宣言下、酒類提供禁止のなかで迎えた十周年となりましたが、長野陽一さんが撮影した写真は、シェフの中村さんもソムリエの阿部さんもとびきりの笑顔です。タイトルは「自分にないところを持っているもう一人」。お二人に取ってもらったポーズの意味、わかる人いるかな?ヒントはサブカットの中に。
2021.08.10 08:00クラフトビアマーケットdancyuの連載「東京で十年。」vol.82は、「クラフトビアマーケット」です。多店舗経営、一律価格など、インディペンデントないつもの十年とは一見異なるように感じるかもしれません。でも2011年2月、虎ノ門に開店した「クラフトビアマーケット」によって、クラフトビールはようやくテイクオフできた。歴史の鍵を握るお店だと私は思っていて、だから十分にインディペンデントです。そして私は10年前、テイクオフの時代に立ち会うことができました。原稿は、その感動から書き始めています。写真撮影は緊急事態宣言発令の直前に行われ、原稿は発令後に書き上げました。世の中はすでに酒類提供の禁止要請を守らないお店がどっと増えていましたが、「クラフトビアマーケット」は全店休業。これま...
2021.07.16 04:40「オルガン」の十年。連載「東京で十年。」vol.81は西荻窪の「organ(オルガン)」、2011年6月のオープンです。オーナーシェフの紺野真さんといえば、2005年5月に三軒茶屋からけっこうな距離を歩いたところに「uguisu(ウグイス)」を構えて以来、東京のナチュラルワインとともに歩いてきた人。取材者として訊かねばならぬこと、個人的に訊きたいことはたくさんありました。ナチュラルワインのこと、2店舗目を持った理由、西荻窪という街について、たくさんの卒業生たち。出自であるサービスの哲学と技術、音楽、喫茶店、空間、豊洲、そしてぐんぐん変わっていった料理。あれもこれも訊いてみたいという思いが増えるほど、逆に、私に書けるだろうか?と不安になっていきました。なぜなら紺野さんは、ご...