「東京で十年。」という連載をつづけて幸福に思うのは、「このお店の10年後を見てみたい」そして「書いてみたい」と願って、本当に書けることです。
神泉の「オルランド」もそうでした。代官山「ラ・フォルナーチェ」から始まって昇り龍だった小串貴昌さんが、満を持した店も自信も失い、「だけどこのままじゃ終われない」と背水の陣でオープンしたエノテカ。
私は10年前、たったひとりDIYで改装する彼を、通りからちらっと眺めたことがあります。黙々と大工仕事に励む光景は、再生への儀式のようでもありました。
その時、まだ開店もしていないのに「10年後を書きたい」って思ったんです。
現在発売中の『dancyu』11月号で、その願いが叶っています。
すでに公表されている通り、『dancyu』は来年より季刊誌に変わり、それに伴って「東京で十年。」もまた今年いっぱいで終了します。
ちょうど「東京で十年。」も、連載開始から今年で十年。
先に書いた通り、私が「10年後」を待っているお店は、イカワ十年手帖にまだまだあります。また、さまざまなお店で「〝東京で十年。〟に出るのを目標にしています」と言っていただける度、この連載は世に生まれてよかったんだな、と小さく確認していました。
ただ、何事も始まりがあれば終わりもあります。
10年前、常に新しい店の情報が求められた時代にあって、「東京で十年つづけてきたお店の価値」を伝えようと始めた連載でした。
今、そうした価値が認められる時代になって、この連載の役割は終わったのかな?とも考えたりしています。まだまだ読みたいという人はどれくらいいるのかな、とも。
いろいろ心は揺れますが、「東京で十年。」は発売中の11月号、来月発売の12月号、そして大トリのスペシャルエディションと3回読めます!
どうぞ、どうぞ、最後まで店主たちの十年(and more)の物語を堪能してください。
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