2020.09.28 03:54そう決める 2020.9.26 東京で、三つ星レストランのシェフを取材した時のこと。睡眠時間が決まっているというので、何とはなしに聞いてみた。「今はきっちり6時間。以前は4時間15分だったんですが」 へえー! と固まってしまった私を見て、シェフは続けた。「やはり睡眠時間が少ないのは、体によくないですよね」 いえいえ、そこじゃないです。15分のところです。「きっちり」が想定外に小刻み過ぎて。 しかし彼には私の驚きが、驚きだったらしい。その数字は眠りの深い浅いから目覚めのベストを計算した「必然」だから。 彼の行動は一つひとつ、とことん考え抜いて決められており、そうして決めたことを、変えずに続ける。日常生活の全てにおいてそう。たとえば朝食なら毎日同じメニュー。ヨーグルトの銘柄と分量、目玉...
2020.09.15 02:41コラム「まっとうな味、正直な店。」ファッション&カルチャー誌『GINZA』に、コラムを寄稿しました。特集〝かっこいい〟を考える。内の「オーセンティック」を考えるページで、建築、ファッションなど各分野の方々が、それぞれの視点で語られています。私に与えられたテーマは、飲食店のオーセンティック。まっとうな味って何?ということ。大きなテーマで、答は一つではないでしょうけれど、ある視点として書きました。「ぽん多本家」「シンスケ」「ホテルニューグランド」「カフェ・ド・ランブル」「お菓子調進所 一幸庵」の、非合理から生まれる味について。お洒落で美しい、審美眼のある女性たちに、ぜひ知ってほしいです。
2020.09.15 02:11「葡吞」熊坂智美さんこの夏が去年と同じなら、「葡吞(ぶのん)」は、飲食でつながる仲間が世界から集まってきて、夜が深まるほどカオスと化していました。木造2階建ての狭くてキシキシいう階段を、女将の熊坂智美さんはおてんば娘のように着物で駆け上がり、駆け下り。けれど取材は、東京都が2回めの営業短縮要請を出した後。西麻布の街自体が元気を失っているなか、「葡吞」は淡々と店を開けていました。繰り返しますが去年と同じなら、営業前には次々とかかってくる予約の電話を受けながら、その日のメニューを毛筆で書く彼女。今回は静寂のなかで筆をすべらせていて、祈るようなその姿が、神々しくもありました。連載「地球は女将で回ってる」。第3回は「葡吞」の女将、熊坂智美さんです。〈彼女はプロの女将。ソムリエール...
2020.09.08 07:30ピッツェリア イル・タンブレッロ「職人には色気がなければいけない」と言ったのはある和菓子職人ですが、ピッツァ職人・大坪善久さんに会う度にこの言葉を思い出します。職人として、人間としてたまらない色気のある人。同世代からも後輩からも慕われている、ピッツァ界の熱いアニキです。私が初めて取材したのは、東日本大震災のすぐ後でした。人間の原始の記憶なのか、ピッツァの薪窯の「火」へ吸い寄せられるように、人々が「ピッツェリア イル・タンブレッロ」へ集まっていました。あれから十年、今度は、パンデミックの年の取材。大坪さんは、今度はナポリの揚げ物屋も始めて、テイクアウトを求める人々を元気にしていましたよ。dancyu「東京で十年。」は、「ピッツェリア イル・タンブレッロ」です。ちなみに、コロナ禍のnot...