魯肉飯のさえずり 書評

二度目の『文學界』は書評の仕事でした。

『魯肉飯のさえずり』(著・温又柔/中央公論新社)。魯肉飯は「ルーローファン」ではなくて、主人公の(と同時に筆者の)台湾人の母の発音で「ロバプン」だそうです。

台湾語の正確な発音うんぬんというところにない、いわく「ママ語」。

この言葉があらわすように、台湾生まれ日本育ちの主人公の「何者であるか」からの解放が描かれています。

その物語の縦軸になっているのが、母と娘。

拙著『不肖の娘でも』とつながるテーマでもあり、書評タイトルは「母という娘」にしました。

一気に読んで書いた原稿は本誌をご覧いただくとして、書き終わって、アン・リー監督の『恋人たちの食卓』(原題は飲食男女)をたまらなく思い出してしまいました。

こちらは父と三人の娘たちの話。料理人である父の作る台湾料理がめちゃくちゃおいしそうだったんです。

本と映画、二つの物語から伝わる台湾の料理が、とてもおおらかに感じるのは親が子へ作る料理だからなのか。台湾の風土ゆえなのか。偶然か。

とにかく今、魯肉飯が食べたい口になってます。