本のカバーデザイン、帯デザインはとっくに決定済みですが、先週末、ふと「本の帯の背にコピーを入れるか入れないか問題」がわきあがりました。
デザイナーの菅さんが、書店で棚の本を見ていたら……。
「背表紙を見ていたら、タイトルとは別の一言がじわじわ効いてくるんですよね」
書店で本が、平積みでなく棚に並んだ場合、買ってくれる人に話しかけるのは本の「背」だけです。その時、どんな言葉で、ふと気にしてもらうか。
背には、タイトル+サブタイトル、著者名、出版社名が入ります。
〝変わらない店 僕らが尊敬する昭和 井川直子 河出書房新社〟
もしも私が村上春樹という名前なら「著者名」で手に取ってくれる人もいるのでしょうが、残念ながらそうではありません。
で、もちろん『変わらない店 僕らが尊敬する昭和』で気にして欲しいわけですが、菅さんが気づいたのは、たぶん「タイトルの世界観を後押しするような、別の角度からのひとことが助けになるかも」ということです。
書店の棚の前で、あの大きな目でじーっと背表紙を見ている菅さんが浮かんで来て、ひとりジーンときてました。
一度決めたことをひっくり返すって、なかなかできないことです。それまでの時間が無駄になる気もする、仕事も増える。でも彼は、なんと自分でコピーを入れて、新たなデザインまで作って出してくれました。
それを受けた編集者も「あたらしい創作のためには遠慮なんていらない」と。なんて頼もしい!
結果を言うと、一周回って最初の通り、コピー無しの案に決まったんです。
菅さんの案に加えて、井川の案も出しました。でも本書は、「変わらない店」という大タイトルのほかに「僕らが尊敬する昭和」「東京編」という2段構えのサブタイトルがあります。
僕ら、尊敬、昭和、東京。キーワードがいくつもあって、文字の情報量が多い。ここは引き算でいこう、という決断も、勇気が要ることです。
結果は同じでも、考えに考え抜いて辿り着いた地点というのは、違う場所に思えるものですね。
ギリギリまで諦めないチームと一緒に作れる楽しさ、感謝。
運にも祝福された本だと思います。
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