1990年は、イタリア料理好きにとってはファンファーレが鳴り響いた年です。
もちろん80年代から「イタリア帰り」の店がじわじわと、東京のニッチな人たちの間では盛り上がりつつありました。そこへ「イタめし」「ティラミス」、そしてこの店が登場。
「アクアパッツァ」であり、日髙良実シェフです。
その30年を、dancyu30周年スペシャルエディション「東京で三十年。」で書いています。
8年ほど前、別の取材で「アクアパッツァ」を訪れた時、「20周年を記念して、みんなが作ってくれたんです」と、日髙シェフが赤いメッセージブックを私にくれました。
卒業生から寄せられた直筆メッセージをまとめたものです。
これは卒業文集だ!とジーンときたと同時に、ああ、「アクアパッツァ」はイタリア料理が大好きになってしまった若者たちの学校だったんだなと思いました。
日本のイタリア料理にはさまざまな系譜があって、それぞれに個性的な師とお弟子さんがいます。
そのなかで「アクアパッツァ」はひときわ卒業生の多い学校です。そして、どうやらみんな校長先生が大好きらしい。
メッセージブックは彼らのメッセージの後に、日髙シェフがやはり直筆でお返事を書いています。
「素敵!」とか「勉強になります……」「感謝しています」などの言葉は心からついぽろっとこぼれ出てきた感じで、恩師なのに同期のようでもありました。
今回の取材でも同じで、「あの頃は調子に乗っていた」など自身の格好悪いところも、落ち込んだ時期のことも、そこからの再生も、聞き手が驚くくらいのまっすぐさで30年を語ってくださっています。
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