春がくる度、私はある言葉を念仏のように唱え始める。 「ホワイトアスパラガスを見つけたら食べろ」 祖父母の遺言でも、わが家の家訓でもない。 誰に命令を下されたわけでもないけれど、それくらいの使命感を持って立ち向かっている。 まあ、平たく言えば大好物である。 とくに北イタリア、ヴェネト州バッサーノ・デル・グラッパ産、なんてメニューにあったらそわそわしてしょうがない。 横綱・照ノ富士の親指より太いに違いない、穂先までずんぐりしたフォルム。現地の市場では薪木のように束ねられ、必ず縦にして売られている。まるで「みんな廊下に立ってなさい! 」と叱られたみたいに。 そうして彼ら
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