瀬戸谷もみじの「和」紅茶

『月刊日本橋』に連載中の、「食の源をたどれば」第16回は、静岡の和紅茶「瀬戸谷もみじ」です。

かつて明治時代の日本では、欧米で人気の紅茶を輸出すべく、政府が緑茶からの生産転換を推奨していたそうです。けれど戦後に輸入自由化となり、海外製の紅茶が押し寄せて国産紅茶は誰も作らなくなっていきました。

ただ、少数ながら情熱を持って紅茶をつくり続けている生産者も、いたのです。

海外の技術を学びながら、ない機械は自分たちで手作りし、日本の紅茶を。

日本人は海外のプロダクトを真似するのが得意ですが、いつの時代も「似たものを」ではなく「日本ならではの」ものに仕上げようとします。といっても名前やエッセンスだけ抜き取った強引な個性ではありません。

いつだったか、イタリアで聞いた言葉を思い出しました。

「たくさんの国の料理人がイタリア料理を学びに来るが、中には故郷に帰ってイタリア料理たるルールまで変えてしまう人もいる。ところが日本人は、イタリアを尊重しながらオリジナリティを表現しようとする」

世界に類を見ないほど、日本ではあらゆる国の食や飲み物が楽しめます。それら他国のプロダクトを学ぶ時、その背景にある文化や歴史をちゃんと尊敬する。私たちはそういうことが得意な国民なのかな、と思います。