今月は、連載のほかにも特集で1本。「ヴィラ アイーダ “畑からつくる” 野菜料理の可能性」。和歌山で20年、小林寛司シェフの「今」を書いています。
2006年に初めて取材してから、シェフのお料理は有機的に、どんどん変化して「表現」になっていきました。単に皿の上の問題でなく、シェフ自身の思考、生き方、感じ方、そういう変化です。
私が見てきたのは20年のうち13年ですが、これだけの変貌に立ち合えた書き手として、伝えられることに感謝です。
彼がリストランテを始めた当時、地方は気が遠くなるほどマイノリティで、大多数が大都市(東京あるいは大阪)を向いていました。でも、たぶん海外で修業経験のある料理人には、実現できなくても地方への小さな尊敬の芽はあったはずです。
その芽を、本気で育てようとしたのが「アイーダ」。
そして今の小林さんは、大都市を超えるとか超えないとかも超えています。
東京には何でも揃うと言われるけれど、集まる多くは誰かが編集したものです。彼に言わせれば、それはたぶん不自由。
一方、畑は無限に自由です。
それを絵の具に例えるなら、既製品の色でなく、小林さんのパレットには彼自身が作った色しかありません。だから、描ける絵は彼だけのものになる。
で、自分だけの絵だからこそ世界とつながれる。
そんなことを書きました。
ローカル・ガストロノミーという言葉が生まれて、誰もがあたりまえに口にする時代になりましたが、「今ごろか」と呟くあのしょわしょわした声が聞こえてきそうです。
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