2021.06.18 04:01日本料理 九段 おおつか『dancyu』の連載「東京で十年。」。今月は「日本料理 九段 おおつか」の10年です。窓いっぱいに溢れる靖国通りの桜が人気のお店ですが、取材はあえて桜の時季を外しました。それ以外の季節もお店は続いているわけで、たとえば取材時は新緑。目に沁みるほど鮮やかな緑が波のように連なって、私はもしかしたらこちらのほうが好きかもしれません。メインカットには、ひょろっと背の高い店主の大塚和馬さんが、画角ギリギリに収まっています。プロの騎手を目指していたのに、背がどんどん伸びてしまって断念。25歳から修業を始めた料理人です。自分より年下の料理人よりタフな「馬力」で、誰よりも長く厨房に立ち、ぐんぐん成長。修業先でスピード出世した後、気立ての良いサービスの女の子・花恵さん...
2021.06.18 03:21「鮨いまむら」今村くるみさんビールが飲みたくなる『食楽』夏号。連載「地球は女将で回ってる」6回目は、「鮨いまむら」の今村くるみさんです。着物姿も美しく、どこかキュートで、しかし芯の強さを感じる物腰。あんなに華があるのに出過ぎない、男前なわきまえ方。ずっと謎だったその正体がわかりました。彼女は女将にしてソムリエールでパティシエール、そして板前という職人。「深く考えないでまず動いちゃう」元気な女の子と、「石橋を叩いても渡らない」真面目すぎる男の子が夫婦になってできた「鮨いまむら」。令和の夫唱婦随について考察してみました。
2021.06.18 03:01「違う」ということ 秋田魁新報 全文 数年前、雑誌のコーヒー特集でイタリア人を取材した時のこと。彼は熱く熱くこう語った。「もしもイタリアからエスプレッソがなくなったら、きっと空港は閉鎖されるし、街じゅうで暴動が起きるよ」 当時はみんなでゲラゲラ笑っていたけれど、今、その言葉を思い出してゾッとしている。 もしも秋田じゅうの飲食店からお酒が消えたらどうなるか。岩牡蠣だってボタンエビだって日本酒なしには飲み込めないじゃないか! と、ちょっと暴れたくなるのは私だけだろうか。 東京では、そのお達しが本当に現実のものになった。 お店でお酒を提供してはいけない。世間では「禁酒法」とも呼ばれるが、今は1930年でなく2021年。まさか自分が生きている時代にこんな状況になろうとは。 というわけで、せっかく...
2021.06.17 01:12ヤマロク醤油の木桶仕込み『月間日本橋』連載、第6回はヤマロク醤油の木桶仕込みです。木桶で醸す食文化は、決してノスタルジーのためでなく、森羅万象の法則にかなっています。木桶や蔵にはさまざまな微生物が生きていて、作用しあい、発酵というマジックを生み出す。それは、強化プラスチックや金属製のタンクではつくれない味です。日本酒、醤油、味噌、酢など和の料理に欠かせない醸造が、日本では古くから行われていましたが、なんと醸造用の大きな木桶を造れる職人が1人(1社)しかいない!という深刻な危機を救ったのが、ヤマロク醤油5代目の山本康夫さんです。彼の醤油は、木桶でなければ醸せない。木桶が絶えれば、ヤマロクの醤油が絶えます。そこで借金をして「最後の一人」である職人に木桶を買えるだけ発注し、自ら弟子...
2021.06.12 01:57『シェフたちのコロナ禍』文春オンライン特別寄稿 前編・後編6月を過ぎてから、禁止されているお酒の提供を「始めます」と表明するお店が堰を切ったように増えました。要請を「守る」「守らない」「守れない」。目の前の事実がすべてなのでなく、それぞれの選択には背景があり、その答に至る道程があります。彼ら飲食店の店主たちが、この1年をどう戦ってきたのか。そこに目を向けてほしいという願いを込めて。