ヤマロク醤油の木桶仕込み

『月間日本橋』連載、第6回はヤマロク醤油の木桶仕込みです。

木桶で醸す食文化は、決してノスタルジーのためでなく、森羅万象の法則にかなっています。木桶や蔵にはさまざまな微生物が生きていて、作用しあい、発酵というマジックを生み出す。それは、強化プラスチックや金属製のタンクではつくれない味です。

日本酒、醤油、味噌、酢など和の料理に欠かせない醸造が、日本では古くから行われていましたが、なんと醸造用の大きな木桶を造れる職人が1人(1社)しかいない!

という深刻な危機を救ったのが、ヤマロク醤油5代目の山本康夫さんです。

彼の醤油は、木桶でなければ醸せない。木桶が絶えれば、ヤマロクの醤油が絶えます。

そこで借金をして「最後の一人」である職人に木桶を買えるだけ発注し、自ら弟子入りしてその木桶を造りながら技術を学びます。

山本さんが素晴らしいのは、自分の蔵だけでなく「木桶文化」の継承のために、木桶サミットなどを開催して日本中の志ある蔵元に技術を伝えていること。

そうして今、木桶職人はどうやら絶滅危惧を回避できそうなところまできました。