2021.03.20 01:05ペレグリーノ/ピガール トウキョウシンプルパスタ号、今回はその特集記事でも、「ペレグリーノ」を書いています。シンプル=簡単、簡略ってことではありません。髙橋隼人シェフのパスタを知れば、その意味がわかります。レシピを見れば、材料も手順も「これだけ?」って突っ込みたくなるくらいの少なさ。トマトソースのパスタソースなんか、瓶詰めのパッサータ(裏ごしトマト)を温めるだけです。でも、そのパッサータに何を選び、どう温めるか。パスタをどう選び、どうゆでるか。お湯の温度、塩分濃度、ゆで時間。仕上げのオリーブオイルまで、思考し続ける。彼にとってのシンプルは、磨き上げたところにある精度。家庭用にアレンジしてくれたパスタでさえも、その哲学が伝わります。もう一つ、連載の「東京で十年。」は、ヨーロピアンパブ「ピ...
2021.03.15 10:51「ビストロエビス」平尾有紀さん料理人でも、サービスでも、女性が続けていくのは難しい現実問題に、結婚と出産があります。イタリアではマンマのシェフも多いというのに、日本では女性シェフがとても少ないのです。実際、イタリアで修業中の日本人女性料理人を現地ではよく見かけましたけど、帰国するとなぜかいなくなる。多くは料理研究家や料理講師、またはアルバイトなど、レストランではない場所で料理を続けていました。けれど、「ビストロエビス」の平尾有紀さんは、出産後もマダムとしてお店に立っています。赤ちゃんをくっつけて。それが可能なのは、夫婦で営む店であること、常連客が多いこと、彼らと公私の境界がないほど家族的であること。といったいくつもの要素が重なっているから、なんですが、それは偶然ではなく、やっぱりマ...
2021.03.15 10:26単機能好き 2021.3.6 この世へ、たった一つの使命を持って生まれたものに愛を感じる。単機能といわれる道具だ。 それも「栓を抜くための栓抜き」といった正統派より、「なぜこんなことのために!」と、ほんのり呆れてしまうくらいの用途であるほどくすぐられる。 それを自覚したのは、友人が「有名デザイナーのだから」の前置きとともにくれた、北欧みやげのフォイルカッターだった。ワインのコルク栓をカバーしているキャップシールを「切る」ためだけの道具である。 そんなものがなくたって、文房具のカッターでも果物ナイフでも切れる、と言われたらおしまいの薄い存在意義。そもそもうちにはソムリエナイフがあるので、フォイルを切りコルクを抜く作業なら、一本でよほどスマートにできる。 なのにこの有名デザイナーなに...
2021.03.01 11:08山田農場のガロのチーズ北海道、とくに函館を中心とする道南は、西洋料理のテーブルに載るものがすべて地元でまかなえる稀有な土地だと思う。パンやパスタを作る小麦も、ワインも、バターもチーズも生ハムも、手に入るだけでなくとてもおいしい。そして、それらを作る人たちも魅力的だ。今回は函館の郊外にある大沼地区の、山田農場。ヤギを育て、その乳でチーズを作る、そのチーズ「ガロ」が素晴らしい。世界に誇れるチーズだと思う。品質を語るときは、その土地のポテンシャルと人間の技量だけでなく、暮らしぶりや思いといった曖昧な部分が実は大事だと思う。もしかしたらかなり大事だと思う。山田さん一家は、まるで「北の国から」のゴローさんのようだ。家も放牧地も自分たちで拓き、造り、生き物を育てて自分たちも生きる。すべ...