2021.05.21 03:14書評「生きた場所としてのレストラン」文藝春秋『文學界』6月号に、『シェフたちのコロナ禍』の書評が掲載されました。評者は作家・詩人・翻訳家である関口涼子さん。「2020年ほど、世界中の料理人が、レストランとは、料理人とはなんなのかについて考えた時期はなかっただろう」「フランス語では、ある主題に関して書かれた事柄(文献、書誌)も文学も同様にリテラチュールと呼ばれるが、そういう意味ではカタストロフに直面した時のそりぞれの迷い、思索と決定を言葉として丹念に書き留めていった本書も「聞き書き文学」として読まれうるポテンシャルを十分に秘めている」文学として評していただけたこと、心からうれしいです。関口さんはフランス在住とのこと。私は書評を通じてフランスの事情を知り、また「見知らぬ人に料理を提供すること...
2021.05.21 02:52『シェフたちのコロナ禍』発売しました。2021年5月13日、文藝春秋より『シェフたちのコロナ禍 道なき道をゆく三十四人の記録』が発売されました。今のような協力金も支援もなかった、昨春の第一波での記録です。助けもないままモラルを問われ、もう何が正解なのかわからない、ぐちゃぐちゃな2カ月あまり。けれど店主たちに取材を重ねるうち、削り取られてなお残る、芯のようなものを感じました。それは「なんのためにこの仕事をしているのか」ってことです。で、彼らの場合、多くがこう言っています。「人に喜んでもらいたい」。飲食の仕事を選ぶ人たちって。なんてこった。そんな本です。くわしくはnoteにて、本書の紹介とトリセツを書いています。
2021.05.21 01:36山の名人たちが採る天然山菜ご高齢でも元気に、まるで庭のように山を巡る名人たち。今回は北秋田の豊かな山から、採りたての山菜を届けてくれる「あきた森の宅配便」のお話です。ポチッとすればすぐ届く通信販売ではなく、注文すると、山の名人がしかるべき時を見計らって山に入り、旬の山菜をすぐに送ってくれる。自分の代わりに名人が採りに行ってくれるような「代行」システムです。本当においしい時季を狙えるうえ、鮮度抜群、何よりむやみに森を荒らさない。その発想も素晴らしいのですが、今回声を大にして言いたかったのは、「年配の方々の能力は宝だ」ということ。山に詳しく、ルートも時季も天候もインプットされている。状況に合わせて体が動く。山菜採り名人だけでなく、東京の飲食店にもそれはいえる。蕎麦屋や定食屋で年配の...
2021.05.08 02:15数寄屋橋サンボアコロナ禍、最も厳しい状況になった街であろう、銀座。第一波から「夜の街クラスター」といわれ、廃業したクラブは300とも400ともいわれています。連載「東京で十年。」は、その「銀座」で「バー」を営む「数寄屋橋サンボア」です。昨春の最初の緊急事態宣言で、バーには約2カ月間の休業要請が出されました。飲食店は、時短であっても営業できる。でもバーは、どんなに静かでソーシャルディスタンスなバーであっても問答無用に休業でした。今春、3度目の緊急事態宣言下は、世間では禁酒法とも呼ばれる「お酒の提供禁止」の要請。でも、「数寄屋橋サンボア」店主の津田敦史さんはこう言います。「営業はできる!」あの2カ月、バーの店主達がどれほど苦しかったのかをあらためて感じました。と同時に、頼...