2018.07.31 06:32vol.18 本当に、それでいいのか?目次、何度もやり直しています。vol.4でいったん解決かと思いきや、やっぱりわかりづらいかも? とかいろいろ吹き出してくるんですね。本書『変わらない店 僕らが尊敬する昭和(東京編)』では、主人公が2人います。●尊敬している「僕ら」●尊敬されている「昭和の店」目線は「僕ら」である、シェフやソムリエ、飲食店店主。だから目次は「僕ら」の仕事とお店で分けているわけです。このちょっと複雑な構造を、どう単純に見せていくか。デザイナーの菅さんは、「彫刻を彫るように、だんだん形をつくっていく」と言ってくれました。ちなみに第一章は、「ゴロシタ.」長谷川慎シェフが尊敬する、「重よし」。章タイトルが、「本当に、それでいいのか?」なんです。なんだか私たち自身に問われているよう...
2018.07.30 03:30vol.17 取材を受けてこなかったお店。メトロミニッツの連載「僕らが尊敬する 昭和のこころ」では、これまで取材を受けていなかったお店もいくつか受けてくれました。それらはもちろん、本書『変わらない店 僕らが尊敬する昭和(東京編)』にも収録されます。ただ、取材拒否のお店が初登場、みたいなことにはまったく興味がありません。取材を受けてこなかったお店には、拒否ではなく「受けられない」理由もあるんです。雑誌に載って知らないお客が増えてしまうと、老夫婦でゆっくり営んでいるお店は対応し切れないとか。小さいお店だから、常連客が入れなくなったら申し訳ないとか。お店という小宇宙にはそれぞれの法則があり、取材者は、言ってみれば侵入者です。だから取材を申し込む前、侵入者はもう一度、自分の中で指差し確認をします。「伝...
2018.07.28 05:00イタリアに行ってコックになる 2018.7.21 久しぶりの関西出張。今、勢いのあるイタリア料理店を取材するためだ。 梅雨明けの真夏日、滝のような汗で顔がどろどろになった私を見て、シェフは言った。「お会いしたかったんです」 2003年に上梓した「イタリアに行ってコックになる」(柴田書店)を読んでくれたのだそうだ。 重版もしなかった本なのに、修業中に愛読したと言う料理人はなぜか多い。関西のシェフは、この本がイタリアへ行く背中を押したと語った。「僕は結婚もして、子どももできて、もうイタリアなんて諦めていた。でもこの本を読んだら、やっぱり行きたいって。一年だけ。そう約束して妻とそのご両親を説得して行ったんです」 この本は、私が初めて書いた書籍だ。 ちょっと自分の話をすると、子どもの頃から海外にぼんやりと興...
2018.07.27 03:30vol.16 閉店したお店。「フロリレージュ」川手寛康シェフが尊敬する、調布「スリジェ」は、今年三月に閉店しました。オーナーパティシエの原光雄さんはお元気です。ただ、取材時から「体が動かなくなったらお店を閉めます」と言っていました。出発点は和菓子職人だった原さんは、当時修業していた店の誰よりも、洋菓子職人の友人よりも手先が器用だった。だから原さんのケーキは、儚さを感じさせるほど繊細。でも凛とした、なんというか気品があるのです。お弟子さんたちもそれを引き継いでいらっしゃる。彼ら曰く「今、よそではしない仕事、学べないこと」がこの店にはありました。私たちの取材時、原さんはデコレーションをその場でやって見せてくれました。本誌でも書籍でも掲載しないオフショット、ちらっと公開。本書では、閉店...
2018.07.26 03:30vol.15 あとがき書いてます。 ひとまず初校を編集者に送ったら、あとがき(おわりに)を、ほどよい分量で書きます。ちなみに私は学生の頃、「おわりに」や、文庫本でいえば「解説」から読んでしまうたちだったので、きっとそういう人は少なくないと思いながらパソコンに向かいます。それにしても振り返って全部読んでみると、案外、たくさん仕事したんだなぁ(笑)。28編のお話ですが、「僕ら」と「昭和の店」を合わせて56人(店)への取材です。『メトロミニッツ』連載担当の松島さんと、「僕ら」のお店へ行って試食し、「昭和の店」へ行って試食し、手紙を書いて取材をお願いし、それぞれ別々にお話を聞きます。彼らは、誌面で文章を読むまで、どんな化学反応が起きているか知りません。それが書き手としては、ひとつの大きな楽しみで...
2018.07.25 03:55vol.14 追悼「バッカス」飯塚徳治さん。この7月、松陰神社前のバー「バッカス」マスター、飯塚徳治さんの訃報が届きました。昭和5年5月生まれだから、享年88歳。東京で迎える二度目のオリンピックを、「ひょっとしたら観られるかもしれませんね」とおっしゃっていた。この書籍も楽しみにされて、「一冊いただけますか」「もちろんです!」というやりとりをしたばかりだった。角道でも曲がるように、こんなにふと、人はいなくなってしまうのですね。「バッカス」を尊敬する店に挙げてくれた「マルショウ アリク」店主、廣岡好和さんの言葉を借りれば、「生涯現役」。まさに、最後の最後まで「バッカス」のカウンターに立っていました。今回、初校が刷り上がってきて、「バッカス」の章になったときです。飯塚さんのプロフィール最後に、私はこん...
2018.07.24 06:03vol.13 筆者の初校校正、終了。初校を読んでいたら途中で止められなくなって、一昨日は久しぶりに徹夜しました。私の初校校正の仕方は、まず最初に赤字の入っていない原稿を、読者と同じように真っさらな気持ちで読む。そこで「ん?」と引っかかったところに印をつけておきます。二度目で、校閲さんのご指摘と合わせて読み、訂正したり、調べ直したり、グレイな部分を一個一個消していく。で、三度目で、赤字を含めてもう一度読み返します。一回直したはずの文章が、三度目の読み返しで「やっぱり最初のほうがよかった」ってなったりするから不思議。校閲さんの赤字は、非常に頼りになります。自分の文章は、いつのまにか他者の目線を失っていくもの。自意識の無いフラットな思考でジャッジしてくれる人、ちょうどワールドカップ・日本VSベ...
2018.07.23 03:30vol.12 校閲さまからのメッセージ。初校校正という作業をしています。今週、取材先のみなさまにも、郵送またはご希望の方にはメールにて届きますのでお待ちください。さてもちろん筆者も読み返して訂正や書き換えなどしますが、そのほか校閲という部門からもご指摘いただきます。誤字脱字に漢字、文法、言葉遣い、事実関係、意味のわからないところなどなど。あきらかな間違いは赤字で訂正、グレーゾーンは鉛筆で。本書は一度メトロミニッツ誌に掲載されたもので、一度校閲の目を通しているわけですが、人が変われば指摘も変わるものです。「ゴッチリ叱られる」の「ゴッチリ」って、言わないの?もしかして秋田弁だったの?
2018.07.21 01:33「ガルエデン×自家焙煎珈琲ヴェルデ」メトロミニッツ 2018.7.20発行神宮前に「ガルエデン」という店を立ち上げたとき、小林賢三さんは「老舗になる」と決めたそうです。イタリア料理とビッラ・アルティジャナーレ(職人のビール)のお店、というより、気持ちのいいテラスでお昼からビールを飲んだり、顔を見知ると「○○さん、こんばんは!」と迎えられるような温かな店。彼には尊敬する人がいます。毎朝夕に豆を焙煎し、街の人のために珈琲を淹れる「ヴェルデ」店主、宮下晃(ひかる)さん。恵比寿で37年続けている珈琲屋です。宮下さんは、好きなことを仕事にした人。小林さんは、一度好きな仕事をやってみたけれど、その道をやめて飲食の仕事に就いた人。向いていないんじゃないかと悩みながら、でもがんばっちゃうし、やめられない。そういう彼のことを、宮下さんはこう言...
2018.07.20 08:46vol.11 写真選んでます。建設中の国立競技場を見下ろす河出書房新社さま、なぜかい草の香りがする会議室で写真選びです。じつはじつは、口絵が32ページもカラーという贅沢!怒涛の昭和美学を楽しんでいただけます。連載時から、アザーカットが生かせるといいなぁと思っていたのです。アザーカットとは、掲載されなかった写真のこと。雑誌の誌面には載せられなかったけれど、写真家は素晴らしい写真をいろいろ撮ってくれていて、眠らせておくのはもったいない。本書はそのアザーカットも一から洗い直して(菅さんが)、小さな写真集のようになる予定。今の段階でめちゃめちゃカッコいいので、お楽しみに。
2018.07.19 03:27vol.10 ハミダシ、収束。かなり、はみ出てます。と出版社の誰かが一章ごとのはみ出し行数を書き出してくださり、こうしてバックアップしてくれる人もいるのだなぁと、本に関わる人の多さにしみじみ感動しています。そして、「はみ出し」→「ハミダシ」ってカタカナだとちょっと可愛い。なんてのんびり笑ってる場合じゃないぞと思っていたら、デザイナーの菅さんがすみやかに行内の文字数を変え、行数をいじり、なんと私が何もしないうちに収束してくれました。おばあちゃんが浴衣の裾を「去年よりうんと背が伸びたねぇ」と言ってチクチク縫い直してくれるみたいに。マジックだ……。文字の大きさは変わっていないのに。そう、あれは最初の打ち合わせ。編集の田中さんから「こうして欲しいというご要望はありますか」と訊かれたとき、「...
2018.07.18 03:30vol.9 はみ出しております。実際に印刷される書体と大きさ、デザインで、最初に上がってくるのが初校。来ました。そして原稿が、めっちゃはみ出しております。これは私が加筆修正し過ぎたためですね。文字量はこれくらい増えるかも、とデザイナーの菅さんに伝えた以上に増えていたと見られます。ふかしてしまった・・・。ここから削ったりして、枠に収めるようにいたします。そう、シュートは枠に入れないと!ところで私は広告育ちの癖か、もともとの性格か、きちっと四角に収めようとする習性があります。四角に、とは1行の終わりのほうまで文字を埋め、文字ブロックを四角形に近づけるという意味です。ぶら下がりと言われる、1行の始めが1文字2文字だけであとは空白、というビジュアルが生理的に落ち着かない。何か悪いことをしたよ...